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今年も花粉症が先月から猛威を振るってます。花粉症なのか?かぜなのか?よくわからないがたぶん花粉症だと思います。と言い切って来院される患者様がおられます。ちょっとまって!それって本当ですか? 確かにスギ花粉がひどい季節には、目がかゆいとか、のどに違和感がある(ひどいと痛みに似た症状)、鼻が詰まる、鼻が出続ける、咳が出る、といった症状が出ることがあり、そうした症状は風邪の症状と類似しており紛らわしいです。熱がなかったり、症状の持続期間も何週間も続く場合は、アレルギー性鼻炎の可能性を疑いますが、でもそれが、花粉症なのか、あるいはダニアレルギーなどによる通年性のアレルギー性鼻炎なのかはわかりませんし、血管運動性鼻炎といって寒暖差で鼻水がとめどなく出るような症状を呈するものもありますし、特にお子さんの場合は繰り返し軽い風邪を発症して鼻が出続ける場合もありますし、アレルギー性鼻炎と風邪を併発することもあり得ますし、花粉のシーズンに鼻が出るから花粉症というほど簡単に結論できないものです。ではどうやってみわけるのか?一つは鼻の中の鼻粘膜の状態。これが赤く腫れあがって奥が見えないくらいに膨れていれば、これはアレルギーによる症状を疑う一つの所見となります。(例外もあります。)そして鼻水の中に好酸球という細胞があるかないか、も、大事なサインになります。花粉症は1型アレルギーが原因であるとされています。人間の体には、侵入した異物を攻撃・排除しようとして、体内のBリンパ球がそれら異物に特異的な免疫グロブリンIgE抗体を産生する能力があります。IgE抗体は、粘膜の下にある肥満細胞に結び付き、異物などの敵に備えます。そこにターゲットとなる異物が侵入してくると、IgE抗体と結合し、肥満細胞を活性化してヒスタミンやセロトニンなどの炎症物質を過剰に放出させ、そのためにひどい鼻炎症状を起こしてくるのです。また、これを抑制するために好酸球がヒスタミンなどを中和するために動員されます。しかし好酸球もロイコトリエンなどの化学物質を放出し、これが過剰となると再び鼻粘膜を傷害してしまうのです。こうした反応に基づく病気の一つが花粉症なのです。よって花粉症の際に大量に放出されるヒスタミンを抑え込む目的で多数動員される好酸球を鼻汁内にたくさんいることを証明できれば、アレルギーにより鼻炎が起きているということを証明できるのです。これを実際の臨床検査に応用しているのが鼻汁好酸球試験です。この検査は簡便で患者さんへの負担もほとんどないです。鼻の穴に入ってすぐの浅いところを探り、鼻水を綿棒で少しいただくだけで検査できますから、インフルエンザやコロナの検査ほどのつらい検査ではありません。結果も1週間以内には出ることがほとんどです。では実際にアレルギー性鼻炎が好酸球の存在によってわかったら、次はなにがそのアレルギーの原因になっているのかを突き止めるのが重要になります。そこでも患者さんの負担ができるだけ軽い検査がよいはずであり、その一つとして血中特異的IgE抗体測定検査があります。患者さんからの問診情報から原因が予測されれば、その原因についてのみにしぼって血液検査をするといいのですが、1個調べて違っていた場合に、また別のものをターゲットに据え変えてまた採血・・・といったことを繰り返し行っていく地道な作業が必要になるのですが、予想が当たれば問題ないですが予想が外れ何回も血液検査が必要となれば、患者さんの負担が大きく、調べるのにかかる時間も膨大になります。よって、よく遭遇するアレルゲンを最初から複数個一度に調べる検査が、1度の検査でたくさんのことを把握できることから、効率が良く好んで使われます。
以上のような検査にて鼻汁好酸球の証明に加えて、スギ花粉に対する特異的IgE抗体が通常よりもたくさんあることが突き止めら、状況証拠がそろっていれば、スギ花粉による花粉症であると診断できるのです。ですから、何でもかんでも花粉症と簡単に決めつけられるほど単純ではなく、実況見分と検査の積み重ねがによって確定されうる必要のある病気なのです。花粉症じゃなにのに長期間抗ヒスタミン剤を飲んで眠くなる副作用にさいなまれることは、大人とってもそうですが、ましてや成長著しいお子さんにとってはねむけは成長を邪魔しますから、決して体によいとはいえません。花粉症かな?という疑問は検査ではっきりとさせることも大事なのではないでしょうか?花粉症以外、例えば、寒暖差による血管運動性鼻炎であれば、寒暖差のはげしい影響が出ないように生活するだけで治る可能性があります。風邪ならば風邪の治療をすればいいわけです。あるいは蓄膿があるかもしれません。その場合はレントゲンで副鼻腔の状態を確認し、蓄膿があるなら抗菌剤の投与が必要になります。ゆえに花粉症と思い込んで治療を漫然と受けて治らないこともあるわけで、花粉症であるという根拠に基づいて治療を受けることが大切だと思います。
当院でも花粉症の治療、行っています。状況の確認を行い、鼻汁好酸球試験を必要により実施し、血液検査でIgE抗体を調べます。血中IgEを調べるうえで、当院にはドロップスクリーンという機械があり、患者さんの負担が少なく検査をすることができます。先ほども申した通り、アレルギーの可能性を探るための血液検査は、仮設を立て、その仮説を証明するために検査をするといった、予測されるアレルゲン1個1個を何回も調べるのは、予測が正しければよいのですが、予測が外れることは多々あるわけで、一回の採血である程度分かるということが患者さん負担の面からは大切です。また、採決の方法も血管にぶすっと注射器を指す検査は、花粉症の検査としてはやや大げさな印象があります。ドロップスクリーンならば指先から専用ランセットを使って20μlという微量の血液をほとんど痛みがない状況でいただければ、検査ができますので、アレルギーを網羅的に調べることにも有効な検査機器ですが、花粉症診断にこそフィットしています。また、検査でスギ花粉アレルギーまたはダニアレルギーと分かった場合、通常抗ヒスタミン薬(第二世代)や点鼻薬、点眼薬などで治療を行うわけですが、症状がとりわけ強い方、薬を毎年飲んでもあんまりな方には、舌下免疫療法という治療があります。これはスギ花粉の場合、スギ花粉のアレルゲンを微量に含む舌下錠をしたベロの下に5分間おいて、その後飲み込むということを毎日繰り返すことで、スギ花粉に対するアレルギーを緩和するという治療です。数か月続けるだけで効果が出るといわれますので、それまで薬を飲んでもあまり効果が実感できない人でも、舌下免疫療法により薬で症状が抑えられるようになったり、あるいはさらにそ先に薬がなくても大丈夫になったりできる可能性がある治療です。ただし3年以上、今では5年は続けるべし、と言われておりますので、根気が必要な治療ではあります。スギ花粉の飛散が収束する6⁻7月以降から当院でも治療可能ですので、花粉症が本当にひどい方は、花粉症の季節にまず先に微絨好酸球試験とスギ花粉アレルギーの検査を受けていただき、初夏になったら舌下免疫療法を始められてはいかがでしょうか?(自称花粉症の状態では、舌下免疫療法はできかねますので、治療希望の場合は問診と検査のプロセスを経ていただく必要がございます。他院で検査された場合でも時間とともにアレルギーのプロファイルは変化することがありますので、舌下免疫療法ご希望の際は当院でもう一回検査させてください。)